黒糖焼酎は奄美諸島でのみ製造を許された焼酎です。本格焼酎や泡盛に比べ流通量が少ないため、飲んだことがない方もいるかもしてませんね。

黒糖焼酎は甘く優しい香りと豊かな味わいなのに後味はスッキリ。焼酎初心者や焼酎が苦手な人でも飲みやすく低カロリー、糖質ゼロで栄養素も豊富なため健康を意識している方にはピッタリの焼酎です。

黒糖焼酎と焼酎の違い

糖焼酎と焼酎の違いは「麹(こうじ)」にあります。

焼酎を作る場合、原料の発酵をうながすためには「糖分」が必要になりますが、焼酎に使われる原料の多くは糖分がありません。

そのため焼酎の種類は米や麦・芋などで色々な穀物などで焼酎を作っています。その場合、麹ででんぷんを分解しブドウ糖に変え、原料を醗酵させ焼酎を作ります。

一方黒糖焼酎の場合、糖分の塊である黒砂糖が原料なため麹は必要ありません。ではなぜ黒糖焼酎には麹が使われているのか?

これは「酒税法」により米麹を使い醸造しないと黒糖焼酎として認められないからです。

つまり酒税法上、スピリッツに分類されるよりも焼酎に分類させるために麹を利用するわけです。

黒糖焼酎を醸造する場合には、
・米麹を使用する
・単式蒸留で蒸留すること
・奄美諸島でのみ醸造する
等の黒糖焼酎の作り方には特有のルールがあるため、どの黒糖焼酎にも麹が使われているのです。

酒税法はともかく麹なしでも醗酵できるなら、麹は無駄なのでは?と感じますが、麹を使うことで独特の風味付けができるため、黒糖焼酎の個性を引き出せるメリットもあります。

黒糖焼酎とラム酒の違い

実際、ラム酒はサトウキビの糖によって造られていますので黒砂糖でつくる黒糖焼酎と似ています。それでは何が違うのでしょうか。

こちらも黒糖焼酎とラム酒の違いは「米麹」と「糖蜜」を使うか使わないかです。

黒糖焼酎は「米麹」を用い原料である黒糖を発酵・醸造したもになります。ラム酒はサトウキビの「糖蜜」で酵母を発酵させる部分に違いがあります。

簡単に言えば「米麹を使う・使わない」かの違いしかない訳ですが、黒糖焼酎とラム酒の場合、ここでも酒税法がからんできます。

黒糖のみで蒸留酒(焼酎)を作ってしまうと酒税法ではすべてリキュール類・スピリッツ類と分類されます。すると酒税法で高い税金がかかるため、税金対策としても米麹を使っているわけです。

製麹(せいぎく)

それでは、具体的な製法を説明していきましょう。焼酎の作り方も参考にするとより理解できると思います。

製麹とは焼酎仕込みに用いる麹を作ることです。麹は焼酎や日本酒だけでなく醤油や味噌・漬物などの醗酵食品に使われていたりと、日本の食文化には欠かせないものになります。

麹の主な役割は、
・でんぷんを分解しブドウ糖に変える
・タンパク質をアミノ酸に変え、うま味を引き出す
・酵母を増やし醗酵を促進させる
などがあり、焼酎や日本酒を醸造する場合、原料となる米や麦だけでは醗酵を促進できませんから、製麹で麴菌を育てることは、美味しい焼酎を作る大切な作業です。

製麹の主な作り方は、

引き込み
床もみ(種切り)
切り返し
盛り
仲仕事
仕舞仕事
出麹
の過程を経て、丸2日間かけ麹米へと育てていきます。

麹菌の繁殖適温は30~40度、15度以下で活動停止、50度になると死滅するため適切な温度管理が必要ですから、麹室と呼ばれる部屋で作業が行われます。

麹(こうじ)の原料

一般的な焼酎の場合、麹に使用されるのは米や麦。焼酎の場合、以前は米麹にはタイ米を使っていましたが現在では食用米の麹も増えています。麦麹にはビールやウィスキーの原料としても使われる二条大麦が使われています。

黒糖焼酎の麹として使われるのは主に米(タイ米)になります。タイ米は酒米や食用米に比べ粘り気が少なく湿度の管理がしやすいため、高温多湿な奄美諸島での焼酎作りには向いています。

その他にもタイ米は糖質が多く含まれおり、米や麦で麹を作るよりアルコールを多く作りやすいという大きなメリットがあります。

蒸しの工程

米や麦の表面を削った後、表面に付いたぬかや汚れを洗います。

そして、水を十分に吸わせた米を1時間程度蒸します。蒸した後は今度は放冷させます。

黒麹菌、白麹菌、黄麹菌の種類

麹菌の種類によって、焼酎の香りや味わいが全然違います。ここでは少し麹菌についての説明をさせてもらいますね。

種類内容
黒麹菌黒糖焼酎や泡盛の醸造に使われるのがこの黒麹菌です。
黒麹はクエン酸を多く分泌するため殺菌作用が強くもろみに雑菌が湧きにくいため、高温多湿な奄美諸島や沖縄・九州南部での焼酎作りに向いており、力強くコクやキレがある焼酎が作れます。
白麹菌白麹菌は黒麹菌の突然変異で生まれた菌で、白麹とはいっても実際には褐色に近く、黒麹より白いため白麹と呼ばれています。
クエン酸を多く分泌し、黒麹より原料を糖化するため焼酎作りの主流として幅広く使われており、優しい香りと軽いさわやかでスッキリした味に仕上がります。
黄麹菌元々日本酒の麹米を仕込むための菌で、黒麹・白麹に比べクエン酸を分泌しないため九州・沖縄のような温暖な地方での焼酎作りには不向きとされてきました。
近年では製造技術の発達により、衛生・温度管理することで黄麹菌でも焼酎が作られるようになりました。味は日本酒の吟醸酒のようなフルーティさ、さっぱりとしていてクセがなく飲みやすいため、最近では黄麹で焼酎を作る醸造所もあります。

製麹の工程

1・引き込み
  蒸米を30~40度に冷ました後、均等に広げる。

2・床もみ(種切り)
  広げた蒸米の温度・水分が均一になった後、麹菌をまんべんなくまぶします。

3・切り返し
  床もみから10~12時間後、蒸米の表面が乾燥し菌同士がくっつき合い塊になり、高温になるため蒸米をほぐし水分や温度を均一にします。

4・盛り
  10~12時間後、再び蒸米同士が塊になり温度が上昇するため、30gずつ小箱に入れ菌の増殖を管理しやすくします。

5・仲仕事
  7~12時間後、蒸米の温度が再び上がっているため、温度を下げるため蒸米を再びほぐし6~7cmの厚さに整えます。

6・仕舞仕事
  6~7時間後、蒸米の温度が37~40度に上がり蒸米が再び固まるため、温度上昇をおさえつつ水分を飛ばします。

7・出麹
  麹室から出すことで蒸米を冷まし麹菌の活動を止め、麹米を乾燥させます。全部の作業を2日間(48~50日間)で行い、麹が出来上がります。

一次仕込み

麹に水・酵母を加え一週間ほど醗酵させれば、一次もろみができあがります。

酵母を増やすことでデンプンを糖に変え、二次発酵のために必要な酵素・クエン酸を作り出します。

糖液

糖液とは、黒糖焼酎の原料となるサトウキビを砕き汁を絞り出し、不純物を取り除いたものです。

黒糖焼酎の場合、サトウキビのしぼり汁(糖液)に石灰を入れ煮詰め、固形の黒糖にします。その後黒糖を水に浸し、蒸気で溶かした後冷まし黒糖液にすることで、ようやく原料として使える状態になるわけです。

二次仕込み

一次仕込みで作られた一次もろみに原料となる黒糖液を入れ、8~10日間程度チェックしながらアルコール醗酵させます。時間をかけじっくり醗酵させ糖化することで麹や黒糖のうま味を引き出せます。

蒸留

単式蒸留とは単式蒸留器(ポットスチル)に入れたもろみを蒸留し、焼酎を取り出す古くから使われている伝統的な方法です。

蒸留後はアルコール度数41~43度の純度の高い焼酎が取り出せます。原料の風味が残りやすいため、本格焼酎や泡盛・黒糖焼酎の場合単式蒸留を使用します。

貯蔵・熟成

ワインのボジョレーヌーボーや日本酒の新酒など、できたてならではのフレッシュさを味わうお酒は多いですが、焼酎は蒸留後必ず1~3カ月程度熟成する必要があります。

焼酎の場合もできたてを味わいたい!と思いたくなりますが、熟成する理由にはいくつかあります。

1.蒸留で付いた臭いを消す

蒸留後の焼酎は硫黄化合物やアルデビド臭・カルボニル化合物など、ガス臭いような臭いがするため、蒸留後の焼酎は飲みにくいため、1~3カ月熟成します。

2.油分を取り除く

蒸留後の焼酎には原料の油分も同時に蒸留されています。
空気に触れると酸化し品質低下の原因になるため、表面に浮く油を取り除くことで美味しい焼酎に仕上がります。

3.熟成時間が長いほどまろやかになる

ワインのボジョレーヌーボーや日本酒の新酒など、できたてならではのフレッシュさを味わうお酒は多いですが、焼酎は蒸留後必ず1~3カ月程度熟成する必要があります。

焼酎の場合もできたてを味わいたい!と思いたくなりますが、熟成する理由にはいくつかあります。

1.蒸留で付いた臭いを消す

蒸留後の焼酎は硫黄化合物やアルデビド臭・カルボニル化合物など、ガス臭いような臭いがするため、蒸留後の焼酎は飲みにくいため、1~3カ月熟成します。

2.油分を取り除く

蒸留後の焼酎には原料の油分も同時に蒸留されています。
空気に触れると酸化し品質低下の原因になるため、表面に浮く油を取り除くことで美味しい焼酎に仕上がります。

3.熟成時間が長いほどまろやかになる

焼酎には1~3カ月の蒸留後熟成、3~6カ月の初期熟成、6カ月~3年の中期熟成、3年以上の長期熟成があり、熟成時間が長くなるほどまろやかさが増しコクが深くなります。

なおステンレスやカメ・樽などの貯蔵容器によっても焼酎の味が変わります。

貯蔵容器の種類内容
ステンレス現代の焼酎作りの中で最も使われているのが、ステンレス製のタンクによる貯蔵法。大容量なため一度に大量の焼酎を保存できますし、蒸留後の焼酎に含まれる揮発性のガス臭が混ぜることで熟成が進みます。タンクの臭いが焼酎に残らないものの、他の貯蔵法に比べ熟成が遅いといわれます。
カメステンレスやホーロータンクが主流になる前は、カメによる貯蔵が一般的でした。素焼きのツボには細かな気功が開いているいるため、焼酎が空気に触れることやカメの遠赤効果、カメから溶け出す無機物が焼酎をまろやかにするといわれます。
使われる樽はウィスキー樽やシェリー樽・新樽です。
樽に貯蔵することで焼酎は甘くなり、バニラや香ばしい香り、色は琥珀色になります。樽に使う木材の種類により味や香りがつけやすいため、個性的な焼酎に仕上がりますが、あまり色がつきすぎるとウィスキーと区別が付きにくいため、酒税法により色の濃さが決められています。

割水

割水とは、熟成後の焼酎のアルコール度数を調整することです。原酒に水を加え、アルコール度数を細かく調整します。焼酎のアルコール度数は単式蒸留では45度以下、連続式蒸留では36度未満と酒税法で決まっていること、高い度数では飲みにくいこともあり割水で調整し出荷されています。

瓶詰め

瓶には一升瓶(1.8ℓ)5合瓶(900ml)4合瓶(720ml)があり、瓶詰め前にきれいに洗浄し、乾燥させた後瓶詰めしていきます。

瓶詰め後はふたを取付け、異物がないかチェックした後ラベルを張って完成。焼酎はアルコール度数が高いため賞味期限がありません。

日本酒よりも光や温度変化による味の変化は起こりにくいですが、適切な保存を心がけないと味や風味が落ちてしまいます。

瓶詰めされた未開封の焼酎を保存する場合、
・未開封でも何年も置きっぱなしにしない
・直射日光や室内照明に長時間当てない
・高温多湿な場所での保存は避ける
など、適切な保存が大切です。

なお開封後の瓶詰め焼酎はなるべく早く飲み切ること、なるべく10度前後の場所で保存するよう心がけましょう。

まとめ

焼酎と分類される中にも黒糖焼酎は、地域限定、製法も限定です、日本にある地域の文化を継承するためにも法律や製法で細かく政令されているのがご理解いただけたと思います。

今回の記事で少しでも奄美諸島特有の黒糖焼酎に近づいていただけたのではないでしょうか。

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